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「とまあ、これがおおよその流れだ」
ロゼとテオを前にして、ラウロは今からの儀式の式次第を説明した。
先程までの機能一辺倒な姿から、祭礼のために新しくあつらえた装束を身にまとったロゼは、ラウロから見てもそこそこまともな巫女に見えた。
「で、ロゼは何をむくれておるんじゃ」
「この変態、わたしの裸を覗き見したんだよ、じいちゃん!」
恥ずかしさからなのか怒りからなのか、ロゼは顔を真っ赤にしてテオに指をさし、糾弾した。
「いや、誤解で…空いた時間で村を見学させてもらっていたら、たまたま…」
「泉に人の気配がしてるのに入ってくるとか、絶対わかっててやってるでしょ!」
「そんな女かどうかすらもあやしいはねっかえりの身体に欲情するような趣味はない」
「もおお、この護衛役、クビ!」
わざとからかってる節のある戦友を目で制すると、テオは肩をすくめた。
「儀式の間は御神体を守るために我ら一族はあらゆる力が半減する。だからこその護衛役じゃ」
「…そんなさ、何も起きないってえ…」
ロゼは口をとがらせて不平を鳴らしたが、祖父の言いつけに反抗するほどには子どもではなかった。
今日のために準備してきた楽団、新しいお社を長い期間をかけて建ててきた大工、常に美しい社殿を保ち守ってきた宮司。たまたま巫女に選ばれたロゼの気持ちで、何百年も続く神様への儀礼を損なうわけにはいかないことはわかっていた。
「わしも30年前の遷宮のときは戦場を駆け回っておったから、儀式のことは聞いた話ばかりで詳しいことは何も知らん」
何もなく終えてるから、今こうして平和なのだというのは確かだった。
「よし、時間じゃ」
ラウロはロゼとテオの背中を軽くたたき、そのままぐっと力を入れると、三人並んで社殿へと向かった。
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