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地下牢から抜け出すのは思った通り簡単だった。人型から本来の竜の姿を解放すれば、その圧力で石も土も押しのけられると踏んだ。だが、小癪なことに何らかの拘束魔術が牢全体にかかっていたらしい。物理的には破壊できたものの、少なからず傷を負った。
気配を感じる。
その勘に身を任せて、アルドは翼を広げた。やるなら短期決戦だ。まっすぐ向かう。ここには神がいる。神を手に入れるのだ。
自分の羽ばたきは小さな人族にとっては脅威だろう。ここを全部灼き尽くさずとも奪って逃げればいい。
あれだ。ひときわ強く放射状に放たれる気配に惹かれ、急降下し、スピードをあげた。
「!」
ロゼの姿を認め、アルドは怯んだ。と、背後に黒い影を察知した。肩に衝撃が走る。体勢を立て直したくて大きく旋回して上空に戻る。
あのヤロー、バカでか剣士が斬り付けてきやがったのか。しかも、御神体とやらを持ってるのロゼじゃねーか!
こうなったら、こうするまでだ。
アルドは剣士とロゼから離れた位置にある建物に目掛けて再び急降下した。体当たり、自分の重量に任せて建物を破壊する。悲鳴があがる。自分に追いつかれる前に急上昇する。突風と衝撃波で立っていることもままならないはず。これを繰り返せばある程度は蹴散らせるだろう。その混乱に乗じて、神の力を奪う!
急降下、と、自分の判断が誤っていたことに気づく。止まれない。想像を遥かに超えるスピードと跳躍力であの剣士は自分の首を狙ってきた。
ためらいもせず殺しにくるか!
防衛本能が働き、咄嗟にアルドは魔法を使った。火炎をまとった隕石を召喚し、黒い剣士を堕とそうとした。
やりすぎた!
建物に火がついたか、黒い煙があがる。しかも剣士も仕留め損なった気がする。ロゼは――。
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