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「あれはただの竜人族じゃないな、たぶん王族血統だ」
間一髪直撃は免れたものの、甲冑の下で右足が焼けただれているのか、じんじんと痛む。
「はねっかえり、全部壊されて燃やされる前に、俺が絶対に倒してやるから、おまえはそのまま前に進め!」
小さな背中に叫ぶと、震えながら少女は振り向いた。
「だめだよ、あれ、アルドだもん」
「はあ? 何を甘っちょろいことを…!」
影が降りてきた。危ない、思うが早いかテオは跳んでロゼを抱えた。渡り廊下の一部が崩れ、地鳴りで何本か柱がばきばきと音をたてて折れる。瓦礫をいくつか分厚い背中で受け止めた。砂埃が舞い上がり、視界が悪くなる。
「あいつはデカブツだから丸見えだけどな」
こっちは見えにくくなっているはず。そこに勝機を見出す。ラウロは本殿で今も何らかの儀式を続行しているだろうから、自分で何とかする。本殿が破壊されることも、ロゼを死なせることもあってはならない。おそらく狙いは彼女の持つ御神体。動きは単調になるはず。子どもだから戦闘自体は未熟、だが王族血統であるからには油断はできない。
降下してくるタイミングは、次の呼吸だ。
今度こそ素っ首落としてくれる。戦士の血がたぎるのを感じた。
「だめだってば!」
少女の声で判断が遅れる。急降下による突風をまともに受けて、テオはロゼとともに吹き飛ばされた。
その衝撃でロゼの手から離れた匣が地面に当たった瞬間、蓋があき、中身がこぼれおちた。
一振りの剣だった。
「御神体が!」
轟音をあげて、竜が一直線に剣に目がけて突っ込む。やるなら、今しか――
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