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「なんとかする!」
ありったけの力を振り絞って跳ぶ。半分の力しか出せないとか関係ない! 剣を、わたしが!
御神体の剣に触れたのは、自分が先だったのか、アルドだったのかわからない。竜の渾身の飛び込みは地面を割った。痛みが全身を走る。でも!
剣をつかんでいたのは、ロゼだった。
……ロゼ……
熱い感触から伝わる声。そして、光。白昼夢のように閃いた果てしない空間。
なに? これは?
「ロゼ!」
テオの声に、目の前の景色は一瞬で戻ってくる。土煙、瓦礫、そして目の前のアルド。
おそろしい形相の竜なのに、何故だかその眼に躊躇とか迷いとかが宿っているのがわかった。
ふらつきながらも、立ち上がったロゼは、剣の切っ先を持ち上げた。常人を超える速さでロゼとアルドの間に割って入ったテオを、反対の手で制した。
「アルド…これはあげられない…」
さっきまで暴れまわっていたとは思えないほどおとなしくなって、ロゼの前で低く、短く唸った。
西殿のほうに目を向けると、入り口は瓦礫で塞がり、建物自体も半壊していた。
一歩前に出ようとして、バランスを崩す。後ろから脇に腕を差し入れ、テオが支えてくれた。肋のあたりが痛いから、折れてるかも。
「お引越し終わったらさ」
じいちゃんとテオとアルドとわたし。
「みんなでいっしょにごはん食べよ」
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