#7 良き友

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「……とんでもねぇこと押し付けられたな、マゲイル。」  話を聞き終わったスフェンは、マゲイルに言う。 「あの校長もアレだな。魔法陣の最高位がこの学校から出るまであのドア後回しだったんだろうよ。全く、人に押し付けるのは得意なんだよな、あのフクロウ。」  雇われている身ながらスフェンは話す。その言葉を聞きマゲイルは息を吐いた。 「全くだ。多分俺を学生総括教員にしなかったのはドアに集中させるためだろう。でも、その思惑は外れたがな。しかし、いつからほっといてるのか陣を見ても分からん。」 「少なくとも僕が初等部に入った頃からある話さ。ざっと20年以上はほっといてる。あの部屋の隣に当てられた生徒は可哀想なもんだ。」  スフェンは煮干しを齧りながら話す。マゲイルはそれを聞き、余計にドアのことが面倒ごとである事を感じていった。それと同時にロチのことも思い出した。 「そいえば、ロチちゃん来たんだっけ?直弟子制度を使うなんて、いつから直弟子持ったんだよ?」  今日一痛いところかもしれない。ほぼ不正に近い使い方だが、スフェンに言うべきだろうか。マゲイルは復活したばかりの頭で少し考えた。もしスフェンに言ったら憤慨するだろうか、告発するだろうかと、友人として付き合って長い悪魔に対しそう考え始めてしまった。 「スフェン、少し聞いてくれないか?これから聞く話は口外しない約束で。」 「良いよ。別に告げ口したりしないさ、僕と君の仲だろ?」  「それもそうか」と言い、マゲイルは話す。師が勝手に直弟子制度を使ったこと、ロチには魔法陣の学は無いこと、入ってすぐに教え込まなければならないことを吐き出した。スフェンは聞き終え、一息置いた。 「……君の先生はあのフクロウ以上かもな。よく了承したな……。もう遅いか……。」 「仕方ない。それが先生だ。俺に期待してやってる。それに応えるだけだ。」  マゲイルは最後の茶を啜り、スフェンに言う。スフェンは少し固まったが「それが君の判断なら。」と理解した。マゲイルはそれを見ると、スフェンはやはり良き友とした。  スフェンに礼を言いドアに戻ったマゲイルは解除作業を再開する。スフェンに声をかけられる前とは打って変わり、直ぐに所定の数まで解くことが出来た。自分の限界も集中が途切れる原因も今回で分かった。これからは窓に布を貼り付けても良い。そう考えながら、先日といた魔法陣を手中に抑え握りしめる。魔法陣は強い刺激と痛みをマゲイルに与えたが、マゲイルはより強く握りしめ消失させた。強い刺激と痛みを皮膚で感じる陣は怨みの籠った呪いである、マゲイル独自の早見表ではそうされている。初っ端から持ってくると言う事は、この魔法陣の作成者は部屋か、この学校に怨みを持っているのかもしれない。だが、それにしては手が込んでいる。やはり作成者に会いたい。  マゲイルはそう思いながら、中等寮を出る。夕刻、もう直ぐ職員寮の夕食が出される時間だ。明日からロチへの指導が始まる。1週間後は新学期だ。指導の準備を始めよう。マゲイルの目に映る職員寮からは微かに夕食の香りが漂っていた。
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