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「四年間も婚約していたのに、ジェイル様にこんなふうに他人行儀に接されて、わたくし本当に悲しいですわ。……わたくしは十八歳になったらジェイル様の妻になると思って十代後半を過ごしてきたのに」
「……もう過ぎた過去の話です」
「あの流行病の発生さえなければ、今頃わたくしはジェイル様の妻だったのですわよ?」
「事実とは無関係な仮定の話をしたところで、どうしようもありません」
もしもの話など言い出せばキリがない。
確かにシルヴィアと婚約破棄することになったのは流行病が原因だ。
シルヴィアが十八歳になった頃、流行病により俺の父と母が亡くなり、急遽側近を辞任してアールデルス領に戻ることになった。
だが、一方的に婚約破棄したわけではない。その際一応話し合いの場を設け、どうするかシルヴィアの意思は確認している。
結婚して俺と共にアールデルス領に行くという選択肢もあったが、それを選ばなかったのは他ならぬシルヴィア自身だ。
それを今さらもしもの話をして、こんなふうに過去を持ち出されても正直困る。
しかもシルヴィアは婚約破棄の後、すぐに新たな縁談を受け、コーレイン公爵当主に嫁いでいる。
今や圧倒的な地位を誇る三大公爵家の公爵夫人だ。
……俺と結婚するよりも結果的に良かったのではないかと思うんだが。
「……ジェイル様は相変わらず女性に素っ気ないですわね。そんなところも素敵ですけど。そういえば、ジェイル様の治めるアールデルス領は随分社交界で話題になってますわね」
「話題にして頂けてありがたいと思っております」
「聞きましたわ。お姉様も行かれたのでしょう? オンセンというものが素晴らしかったと絶賛してらしたわ。美容にも良いみたいですわね?」
「女性はそう言ってくださる方が多いですね」
「ふふっ、興味深いですわ」

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