15人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
実家には一本の桜の木がある。
太い幹、屋根と同じくらいまで高さのある大きな桜。
だけど、この桜の木。
あちらこちらで桜が開花して、世間が少しずつ春の訪れに浮き足立っても。
近所の他の桜が、はらはらと花びらを風にのせて運んできても。
一輪として咲くことは、ない。
もう何年も。
この桜の木は咲かないまま、ここに立っている。
どれだけ月日が経っても。
季節が流れていっても。
この桜の時は止まったまま。
あの年から。
この桜はまったく咲かなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!