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「ママ! またこんなところにいて……」
朝起きて寝室に確認しに行ったらママがいなかった。
こういう時は、大体縁側で腰掛けている事が多い。そうあたりをつければ、やっぱりそこにいた。
少し不機嫌に声をかけた私の方を振り返り、ママがふんわりと笑う。あんまりにも優しく笑うから、私は怒っていた気持ちが一瞬やわらいだ。でもそれも一瞬。私はすぐにママに駆け寄る。
「もうっ、そんな薄着でここに座ってたらダメって言ってるでしょ!」
三月下旬。暖かくなってきたとはいえ、まだまだ朝方はひんやりする。どうせこんな事だと思っていたので、手に持っていた上着をママの肩にかけてそのままそっと背中から抱きしめる。
折れそうなほどに細い身体。手を握りしめれば、ひんやりとしている。いったいいつからここにいたんだか。
「あらあら花織ったら。来月には六年生になるのにまだまだ甘えん坊ね」
「いいでしょー。心配させるママが悪いんだよっ。大人しくそのままぎゅってさせてて」
「はいはい」
私に抱きつかれたまま、首だけ振り返ってふふって笑う。その笑顔は優しくかわいらしくて。もうすぐアラフォーだっていうのに、そんな気配はまったく感じさせない。
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