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スパイス効かせて(3)
ヴルフヒルト「……物わかりのよい子だこと。そしてわかりやすい子ね。……フフフ……ここから、あの城は近い。ですので……アイリカ、あなたが懇意にしているオットーさんとも離れないで済むわ。あなたが先程、引越しの件をこのひとから聞かされて、狼狽したのは、そのためもあったのでしょう? ……わたしたちはおしゃれをして彼に会いに行く、あなたを知っていたのよ」
娘は目を白黒させた。
「……ぇ!!!!?? へっ、はは、うええ!!?? えええっ……ぃぃぃやぁ……い、いや、え、ええと……あ、あ、彼とは、ぉぉぉオットー君とは……しょ、しょの……ととと、友達ぃぃであってぇ……」
オルドルフ「……珍しく赤面しとるの。……良いのだ、娘よ。お前ももう、25歳。わしが同じく25歳のときにお前は生まれてきた。母上もわしと同じ年齢だ。……オットー君は森林官の息子だな。父はすでに肺病で亡くなり、病弱な母と二人で暮らしとる。医者のアルブレヒトから聞いた。……オットー君とその母を城に呼んで、共に暮らしてもいいのじゃ。なんといっても、城は広く、部屋はいくつもあり、使用人や執事を雇いたいとわしらは思っとらん。……一度、彼に会わせておくれ。母上とわしは彼と話してみたい。……お前がにこにこ笑って、手をつないで歩いとる彼とな」
娘は口ごもりつつ、正直に返した。
「……しょ、しょこまで……ご存知、であったとはぁ……た、ただ、まだ……その、か、彼と私は……まだ、にゃ何も……」
ヴルフヒルト「言わなくても良い。それもわかっています。……あなたはわたしとは異なり、自らの想いを抑えられる。わたしがあなただったなら、親のことなど無視して、彼の家へ連日泊まりに行っているわ。わたしはそんな人間なの。……自分でも自分の中でわき起こってくる想いを処理できない。あなたはこのひとに似て、落ち着いて行動できる。……わたしは安心している。フフフ……オットーさんも、あなたのそんなところが好きなのでしょう」
アイリカ「…………」
オルドルフ「……探偵に調べさせたのではないんじゃ。尾行したのでもなく……屋敷の近くの森で、お前が彼と会っていたから。……わしと母上は、ドレス姿で彼に会いに行って、笑っているお前と喜んでいるオットー君を見ていたのだよ」
アイリカ「!!! ……は、はい……。そうで、ありましたか……。わ、私は……か、彼が……しゅ、好きです。……本当です。ま、まだ、彼とは……ふ、深い関係になっては、おりませぬが……わ、私は彼が……いいのです……す、すす好きなのです……父上ぇ、母上ぇ……黙っていて、すみませぬ……」
オルドルフ「うんうん……わかった、わかった……お前の性格だと、言いにくいことじゃ」
ヴルフヒルト「……幼き時分から、嘘はつかない子よね。……さて、ここまでは、重厚かつ露骨な話をしてきましたが…………アイリカ、本日の夜食は、カレーライスなのですよ!」
アイリカ「え!? ……お、おおお〜〜〜!! わ〜〜〜〜い、においで気付いてたよ〜〜、カレーライスすき〜〜!!」
オルドルフ「だろ〜〜〜! わしもすき〜〜〜〜!!!」
ヴルフヒルト「ウフフフフフ……」
アイリカ「わ〜〜〜〜いッ!!! 食べるぅぅ〜〜早速、食べるぅぅ〜〜〜ッ」
オルドルフ「わしも〜〜〜!!」
ヴルフヒルト「ええ……食堂に行きましょう」
「「は〜〜〜いッ!!」」父と娘は声を揃えた。
「フフフフフフフフフ……」母は笑った。
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