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スパイス効かせて(2)
アイリカ「は……はい。……わ、私は……いえ、私の父上は……辺境伯のオルドルフであり、私の母上はヴァルハラ皇帝陛下の唯一の妹であらせられるヴルフヒルトであります。私は仲睦まじきお二人の間に生まれた一人娘でありまする……」
ヴルフヒルト「……そうねぇ。……本来の身分としては、お父上よりもわたしの方が上位なの。わたしの両親は兄様とわたしを残し、どちらも戦争で亡くなっているし。……お父上とお付き合いしていたわたしはもう愛しくて愛しくて、耐えられなくなってしまったゆえに、このひとと夫婦になった。つまり、恋愛結婚よ。命じられて、嫌々結婚したわけではなくて。……そして二年して、あなたが生まれてきた。……あなたは間違いなく、このひととわたしとの子。……アイリカ、あなたはこのひとから襲爵し、いつかはヴィーンゴールヴ辺境伯となるでしょう。わたしからも、このひとからも、あなたが望むものは、あなたの意志で全て受け継げるのです。……まぁ、それ自体は何も懸念していないわ。……何故かというと、あなたはわたしよりも、このひとよりも、為政者として適しているから。河川の治水のことも……あなたになら任せても平気だと、わたしたちは考えた。……わたしたちのような立場の者は、生まれ持っての使命がある。……それはできない、それはわからない、といった甘えは一切通用しない。わたしたちはできなければならない。わかっていなければならない。……あなたならば、この領域は大丈夫。……グラズヘイムの玉座にすわっている兄様も、お義姉さまもそれについては全く同じ意見なの」
アイリカ「…………。……な、なんとぉ、嬉しい……お言葉で、ありましょうや……」
オルドルフ「……わしはどんなときもお前を誇りに思っとる。お前が大好きじゃ。……わしらのところへ生まれてきてくれて、ありがたく感じておる……ん〜ん、アイリカ〜…」
娘は父の手を取った。
「ち、父上ぇぇ、ななな、なんとお優しいぃぃぃ……」
ヴルフヒルト「……フフフ、私もそう。あなたがいてくれて、いつもいつも嬉しい……」
娘は母の手も握った。
「は、母上ぇぇ……あ、ありがとうぅぅ、ございまするぅぅ……」
オルドルフ「うむうむ。なんて愛おしい子じゃろう。……でな、話を戻すと……退去の期限までにお前の大事なものは、城の方へ運んでおくようにな」
娘は父から頭をなでられている。
「……は、はい。御意にござりまする、父上ぇぇ、母上ぇぇ……は、はぁ〜〜〜よかったぁぁ……」
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