今日は何日?

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 篤は目の前が真っ暗になった。 「浜中篤殿。右の者は、酒気帯び運転のかどで罰金刑を科されたため、医師法第七条第一項により、令和七年一月一日より同年三月三十一日まで、三か月間の医業の停止を申し渡す」  病院長は、厚労省からの通達を読み上げると、篤への叱責の言葉を続けた。篤は頭を下げるより他に仕方がなかった。  ただ、最後に病院長は語気を弱めて言った。 「カレンダーを見ると、四月一日は日曜日だな。じゃあ、二日に顔を出しなさい。もう一度君が循環器内科に戻れるように手配しておくつもりだ」  篤は、「ありがたいです。よろしくお願いします」と言って院長室を出た。  令和六年の秋のある金曜日、篤は大学時代の仲間たちと久しぶりに同期会をした。大病院に勤務して八年近い年月が流れて、篤は慢心の塊になっていた。製薬会社のセールスマンはペコペコするし、看護師たちも何かと持ち上げてくれるし、誰もいましめてくれないからだ。午前一時ごろまでしこたま飲んだ翌朝七時半ごろ、少し酔いが残っている気もしたが、これくらい大丈夫だと判断して車を走らせた。  いつもなら三十分足らずで着けるのだが、渋滞にはまってしまった。いらいらしていた篤は突然青ざめた。前方に検問が見えた。急いで右左折しようと思ったが、もう間に合わない。  警官が一台一台車を止める。窓を少しだけ開けた。 「すみません。爆発物をしかけたという電話がありましたので、ご協力をお願いします。座席とトランクを見せてください」  篤は頷き、声を出さずに、やり過ごそうとした。  警官は一通り調べて、運転席に戻って来た。 「ずいぶんお疲れのようですね。大丈夫ですか?」  篤はまた黙って頷いた。 「免許証を拝見します」  篤はしぶしぶ窓を大きく開けて免許証を差し出したが、堪えていた息を吐いてしまった。 「あれっ、臭いますね。ちょっと呼気検査しましょうか」
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