今日は何日?

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「どちらのチームを応援しているのですか?」 「マンチェスターユナイテッドです」 「えー、ぼくもですよ」  こんなところでマンチェスターユナイテッドのファンに会えるとは、何という偶然。篤が「浜中といいます」と名乗ると、相手も「剛田です」と名乗り、話がはずんだ。  試合がマンチェスターユナイテッドの逆転勝利に終わり、二人はますます気分が盛り上がった。 「ところで、浜中さんのご職業は何ですか?」 「医者です」 「それではお仕事でロスに行かれたのですか?」 「いや。三か月休みがあったので、研究という名目でロスで充電していました」 「へー、お医者さんは忙しいのに、よく三か月も休みが取れましたね」 「ええ……、あまり大きな声では言えないのですが、酒気帯び運転で、三か月の業務停止処分を受けましてね。ちょうど今日までなんですよ」  剛田は驚きの表情を浮かべた。 「剛田さんのお仕事は何ですか?」 「公務員です。いや、もっとはっきり言った方がいいですね。……刑事なんです」  一瞬、篤は息を呑んだ。 「そ、そうなんですか……」 「驚かせてすみません。浜中さんが事情を打ち明けてくれたのに、こちらが公務員ととぼけるのは何だか申し訳ない気がして」  篤は右手を左右に振った。 「いやいや、こちらこそ気を遣わせてしまいましたね。今は、やましいところはありませんから、ご心配なく」  二人は顔を見合わせて苦笑いをした。 「剛田さんはロスには何をしに行かれたのですか?」  剛田は声を潜めた。 「ロサンゼルス警察のサイバー犯罪対策研修に、上司のお供で行ったんです」 「じゃあ、上司の方と今も一緒で?」  剛田はかぶりを振った。 「上司はビジネスクラスです。私はエコノミー。身分が違いますからね」  剛田は「身分」という言葉に力をこめて、口角を上げた。  そのとき、機内放送が入った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加