今日は何日?

6/8
前へ
/8ページ
次へ
「ひょっとして太っていましたか?」 「ああ、肥満タイプですね」 「ちょっと失礼してトイレに行ってきます」  剛田は立ち上がって、前方へ歩いて行った。 篤は興奮した頭を鎮めようと、コールボタンを押して、冷たいオレンジジュースを頼んだ。  篤は悩んでいた。後ほどCAから今回の医療措置についての報告書に署名を求められるだろう。その際、まさか嘘はつけないので、所属病院名を書くことになる。そうすれば、病院に連絡が行き、医業停止期間中に医療行為を行ったことが露見してしまう。罰則はどうなるだろう。医業停止期間の延長で済めばいいが、万一医師免許剥奪になるともう将来はなくなってしまう。  剛田が戻って来た。彼も「喉が渇いた」と言って、オレンジジュースを頼んだ。 「乾杯」と彼は紙コップを持ち上げ、ジュースを飲み干した。「本当にご苦労様でした」と屈託のない笑顔を見せている。だが、彼は篤の違反行為をどう思っているのだろうか?  先ほどのCAがやってきた。 「浜中先生、恐れ入りますが、業務報告を提出しなければなりませんので、ご協力ください。ここに、医療所見と所属病院名・お名前・ご住所・電話番号を記入してください」  浜中が記入している姿を横から見ていた剛田が口を挟んだ。 「CAさん、ここ違っていますよ」  浜中とCAは揃って剛田の顔を見た。  剛田が指さしているのは、日付の欄だった。 『2025年3月31日15時20分』と書かれていた。 「いえ、この時間に浜中先生が診察なさったことは間違いありません」  剛田は笑いながらアップルウオッチを見せた。 「それはロサンゼルス時間でしょ。日本時間なら、2025年4月1日7時20分だよ」 「そうですね。併記します」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加