今日は何日?

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 CAは怪訝な顔を見せたものの、日本時間を記入した。篤には剛田の言わんとすることがわかった。万一の場合を想定して、かばってくれたのだ。これで、いざというときには、言い逃れができる。  篤は気が楽になったが、ふと思い浮かんだことがあった。もし、航空会社が病院に感謝状を贈ってくれたり、患者がお礼を言いたいと病院に連絡してきたりすると、面倒なことになるかもしれない。念には念を入れておいた方が良い。 「CAさん、念のために言うのですが、感謝状の類はご遠慮します。それと、患者さんには私の名前と病院名を伏せておいていただけませんか?」 「はい、弊社の地上部門にそのように伝えます。ご要望通り、弊社から感謝状をお送りすることは差し控えると思います」  篤はほっとした。CAはすまなそうな顔をして続けた。 「ただし、患者様から弊社に先生の連絡先を知りたいとご連絡があった場合は、連絡を受けた者が判断しますので、お約束はできかねます」  何と杓子定規な、と篤は思ったが、口には出さなかった。あまり強く言うと、なぜそんなにこだわるのかと、やぶへびになってしまうかもしれないと思ったからだ。  CAが一礼をして去ったあと、座席に深く座り直すと、思わずため息が出た。  隣の剛田が話しかけて来た。 「浜中さん、ご心配には及びません。手を打っておきました」  篤は剛田の意図がわからず、当惑した。 「実は、患者は私の上司でした」  剛田は笑いをこらえながら続けた。 「気になったものですから、トイレに行くついでに、ビジネスクラスに寄りますと、上司の山崎が横になっていました。少し話をしたら、山崎は、先生に礼状とお礼の品を送りたいと言うんです」  それは困ると、篤は眉をひそめた。
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