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終わりと最後は、少しだけニュアンスが違う。
「キトリ、本当に宜しいのですね」
「いいんだ。この世界は何もくれない。きっと誰にも」
僕を抱きしめるカイユの腕は暖かく、肩口を通り過ぎるその呼吸は柔らかくタイムのような薬の香りがした。
「いいえ。私にキトリをくれた大切な世界です」
「カイユはいいの?」
「キトリがいない世界に意味はありません」
見上げたカイユは、いつもと同じように優しげに僕を見つめた。
いつもと同じ。
狂っているのは多分僕じゃなくて、カイユの方だ。狂ったカイユが狂った僕を作った。それはもう随分前のことだ。
随分昔の思い出が、僕の中でフラッシュバックする。これが走馬灯というものかもしれない。
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