終わりと最後、そして美しい花

7/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「当代のキトリは次代を生成されますか」  その日のカイユもいつもと変わらず僕に微笑んだ。  100年毎の問いかけ。僕の最後に次の僕を作るか、あるいは。  キトリは、王は100年世界を見続けて、そのたった1つを判断する。それだけが僕の本当の仕事だ。 「終わりにする」 「キトリ、本当に宜しいのですね」 「うん。カイユ。僕と一緒に終わらせよう」 「仰せのとおりに、王よ」  カイユは常と何も変わらず、僕を抱きしめた。その腕は僅かに震えていた、気がする。  きっと国民の中で反対する者もいないだろう。  何も齎さない静かで喜びにあふれた世界。  きっとみんな、既に死んでいたんだ。最初に死を諦めた時に。この固定された世界はきっと最初からみんな生きてなんていなくて、きっと人々の幸福を願った誰かの幻想のように風だけが吹いていた。  最後の日、トラソルテオトルはその全ての力を込めてたくさんの花を咲かせ、風にその花弁を乗せた。僕からはもう見えないけれど、カイユを除いた99人の国民はきっと今頃全員その仕事の手を止めて空を見上げ、かつて桜と呼ばれた花が世界を満たすのを眺めているだろう。そしてまもなく毒がこの世界を覆いつくす。 Fin
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!