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在宅で仕事をしている父の部屋に行った。
ノックをしても返事はない。
「失礼します」
いつも通り片付いた部屋だ。だが、電気がつけっぱなしで父はいない。
デスクには仕事用の携帯電話とプライベートで使う携帯電話が並べて置いてあった。
テレビをつけると、昼の3時だというのに放送休止時間に流れるカラーバーが映るだけだった。非常用のラジオのスイッチを入れても電池切れで聞こえなかった。スマホのニュースには特に変わったことは出ていない。
私は怖くなって、外に出た。
やたら静かだ。
そういえば、うるさいぐらいに鳴くせみの声も聞こえない。
(そうだ、さっきの地震。意外と大きかったのかな。)
昼間の避難場所として家族で決めておいた近くの公園の広場に向かった。
通りに出ても車も人もいない。
世界終末論のニュースが頭をよぎった。
(まさか。あと1週間あったはず。そもそもあんな予言当たるはずない)
私は階段を駆け昇り、広場に着いた。
誰も、いない。
「そんな、」
私はその場に座り込んでしまった。
(みんなどこに行っちゃったの?)
「よっ!」
ふりむくと、同い年くらいの髪の長い女の子が立っていた。
「やっと見つけた。あんたも生き残りね」
「いきのこ…り…」
「ごめん、ごめん。言い方が悪かったね。そんな顔しないでよ」と笑う。「この街から、みんな消えちゃったみたいなんだよね」
「この街だけじゃないかも」私は小さな声で言った。
「どうして?」
「テレビも放送してなかったし」
「そ。うち、テレビないの。さっき地震あったでしょ。私さ、小さい頃にお父さんが失踪したの。その時と同じ匂いがした。いやだけど、ちょっと懐かしい匂い。あ、名前言ってなかったね、私は馨。あんたは?」
「沙彩」
「サアヤ、いい名前ね。カオルってさあ、男か女かわかりにくいし、画数多いし、あんまり好きじゃないんだよね。なんでこの名前にしたのって聞いたら、画数がいいからだって。そういうのけっこう信じるタイプなんだよね、あの人」と笑う。
「世界終末論もすっごい信じててさ、焦ってたよ。友達の誰それに会わなくちゃとか言って毎日ランチ会とか飲み会行ってた。それにしても暑いね。よかったらうちに来ない? 電気は使えるんだよ。エアコンきいてるし。あぁ、アイス食べたい。うちで作戦たてよう」
私はカオルの家に行くことにした。
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