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「お邪魔します」
「だから、誰もいないって」と、また笑う。
玄関に置いてある男物のくたびれた革靴を見て、カオルの動きが止まった。
「サアヤ、ちょっと待ってて」
カオルが部屋に入ると同時に、中から男の声がした。
「ただいま、カオル、大きくなったな」
「お父さんなの? なんで、今…」
「ごめんな。父さんがカオルにどうしても会いたいと思ったばっかりに、母さんが代わりに消えてしまうなんて思わなかったんだよ。世界があと7日で終わるんだろ。最後の1週間だけでもカオルの父さんとして過ごさせてくれないか」
「お父さんのバカ! 母さんだけじゃなくて、みんな消えちゃったんだよ。バカバカバカバカバカ」
カオルの、むせび泣く声が聞こえた。
「サアヤ、こっち来て」
「お邪魔します」
カオルにそっくりな男の人が立っていた。
「あの、初めまして。沙彩です」
「サアヤ、ごめんね。うちの父さんがこっちの世界に戻ってくる時に、うちら以外みんな消えちゃったみたい」
「そんなことってあるんですか?」
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