薄紅色の絵の具で

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 枯れた木の幹にぽっかりと大穴があいている。その穴から、長い白髪に、死装束のように白い着物を着た女が、ゆっくりと這い出てきた。  女が顔を上げて、にっと唇の端を吊り上げる。 「うわぁ!?」  俺は自分の悲鳴に驚き、飛び起きた。全身にびっしょりと汗をかいている。 「またあの白い女の夢……」  いつもの癖でスマホの画面に触れる。表示された時刻は午前二時の丑三つ時。  その時、視界の端で白い影を見た気がして、俺はあわてて掛布団を頭までかぶった。 「あの山桜、やっぱり呪われてたんだ……」  俺は恐怖にがくがくと身体を震わせながら般若心経を唱えた。  どうやら俺は、白い女に取り憑かれたらしい。
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