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「そうか、お前はセイジロウと同じ景色が見えるのだな」
「生まれた時からずっとこの景色だったから、気づかなかったよ」
色覚異常のことを、そういう景色のひとつとユキさんが前向きに解釈してくれたことが嬉しかった。
「あ、ユキさん、身体が!」
「ん?」
ユキさんの身体が消えかかっている。しかし、本人は気にした様子もなかった。
「ふむ、あまり時間が残されていないようだな」
時間がない。それを聞いて、俺は昨日から考えていたことを伝えることにした。
「おじいちゃんは心臓の病気もあるから、退院するのは厳しいけど、一度だけ家に帰れるかもしれない。その日に山桜のところに……」
「やめてくれ!」
ユキさんの激しい拒絶に、俺は目を丸くした。
「どうして?」
「枯れたみすぼらしい姿を見られたくない。記憶の中の綺麗な姿だけを覚えていてほしいんだ」
「ユキさんは今のしわしわのおじいちゃんを見て、みすぼらしいって思いますか」
「思うものか!」
「だったら同じです。おじいちゃんもきっと、どんなあなたでもいいから会いたいはずです」
ユキさんははっと息をのんだが、そのまま黙って姿を消した。
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