薄紅色の絵の具で

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 三日前のこと。  食品関係の会社に入社して一年経ち、俺は本社から支店に転勤することになった。  その日は花見と称した飲み会で、俺は場所取りに向かっていた。  その道中、母から連絡があった。  近くにある祖父の家を片付けてほしいらしい。 『おじいちゃん、風邪をこじらせて入院してるでしょ? 実家、物だらけだし、今のうちに片付けたくて』 「えー」  嫌そうな声を出してしまったことを、何だか後ろめたく感じる。  ふと顔を上げると、目の前に青白い顔の人間が立っていた。急いで視線をそらす。どう見ても生きている人間ではない。 『認知症のせいで、私がやると怒るのよ。あんた孫だし、おじいちゃんのこと大好きでしょ?』 「いつの話だよ」 『とりあえず頼むわね。またお見舞いにも行ってあげて』  強引に用事を押しつけて、母は電話を切った。 「見舞いとか面倒くさいな」  おじいちゃんには申し訳ないが、今の仕事に慣れるのに精一杯で、おじいちゃんのことまで気遣える余裕がない。  何気なくパン屋に視線を向けると、ガラスに映る俺の背後に先ほどの幽霊がついてきているのが見えて、俺は早歩きした。  俺は昔から変なものが見える体質だった。
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