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公園に到着すると、どこもブルーシートだらけで、空いている場所は見当たらない。
営業部の先輩と合流した俺は、営業部長から指示された穴場らしき場所に向かった。
「ここですかね?」
「そうね」
目の前には大きな山桜が一本生えている。
たしかに人もいないし、穴場ではあるが……。
「全然咲いてないですね」
「残念ね」
「酒が飲めれば何でもいいんでしょ」
女性の先輩たちはそう言って、さっさとシートを敷き始めた。
「満開だったらよかったのにね」
「そうですね」
一応、同意する。本当はそこまで桜を綺麗だと思ったことはないけど。
山桜の周囲にシートを敷いていると、背後に視線を感じて振り返る。
木の幹のそばに、白い着物姿の女が立っていた。
女は目を見開いて、こちらを凝視している。
「ひい!?」
「何!?」
先輩たちがあわてて振り返る。
「あ、いえ、でっかい虫がいて」
「何だ、驚かせないでよ」
彼女たちは作業に戻ったが、俺のほうを気にしながら声をひそめて言った。
「本社でも挙動不審だったらしいよ」
「だからウチに来たとかじゃないよね」
俺は聞こえないふりをしながらシートを敷いた。
その間もずっと、女の視線を感じていた。
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