薄紅色の絵の具で

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 夢を見た。  泣きながらユキさんを探す青年の前に、俺が立っている。これはユキさんの視点だろうか。 「ここにいる。セイジロウ、ここにいるぞ」  素敵な人と出会った、結婚する。と青年は恥ずかしそうに、すこし寂しそうに笑った。 「おめでとう。ふたり一緒に、誰よりも幸せになるのだぞ」  子供が生まれる。と青年が興奮した様子で言った。 「祝福を」  娘が結婚する。と年をとった青年が困ったような顔で言った。 「そう寂しそうにするな」  孫が生まれる。としわが増えたかつての青年が幸せそうに目を細めた。 「ふふ、嬉しそうな顔をしおって」  ユキさんの目から見たおじいちゃんは、いつだって輝いて見えた。  本当は、どんな気持ちで聞いていたのだろう。
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