5人が本棚に入れています
本棚に追加
渋々という様子を強がって演じながら、ソファに戻った万吉は、診療所にやって来た元則について話した。
「まあ、いつかは壊されると思ってたけどね。そっかあ、ゲンさんが」
どうやら一も元則のことは知っているらしく、そう言って眉を顰めた。
「その落ち武者って、本当に恨めしそうな顔してたの?」
と、旭が尋ねる。しかし万吉は、上手く返事ができなかった。
「え、多分……いや、俺もちゃんと見てなかったっていうか……」
「んもー、万吉先生ったら、怖がりなんだなあ! お医者さんなのに!」
「目を合わせて取り憑かれたりしたらどうするんだよ! 医者は関係ないだろ!」
そんな二人の言い争いを制止するように、一が勢いよく立ち上がった。
「よしっ、じゃあ行こうか」
「えっ?」
「やった!」
と旭が飛び上がる。
「捜査? 捜査するんでしょ!」
「行くって、どこに?」
「心当たりのある人がいるんだ」
きょとんとしている万吉を見下ろす一は、自信ありげにウインクをした。
「大丈夫、僕に任せて!」
最初のコメントを投稿しよう!