1.宇津美万吉の憂鬱

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 渋々という様子を強がって演じながら、ソファに戻った万吉は、診療所にやって来た元則について話した。 「まあ、いつかは壊されると思ってたけどね。そっかあ、ゲンさんが」  どうやら一も元則のことは知っているらしく、そう言って眉を顰めた。 「その落ち武者って、本当に恨めしそうな顔してたの?」 と、旭が尋ねる。しかし万吉は、上手く返事ができなかった。 「え、多分……いや、俺もちゃんと見てなかったっていうか……」 「んもー、万吉先生ったら、怖がりなんだなあ! お医者さんなのに!」 「目を合わせて取り憑かれたりしたらどうするんだよ! 医者は関係ないだろ!」  そんな二人の言い争いを制止するように、一が勢いよく立ち上がった。 「よしっ、じゃあ行こうか」 「えっ?」 「やった!」 と旭が飛び上がる。 「捜査? 捜査するんでしょ!」 「行くって、どこに?」 「心当たりのある人がいるんだ」  きょとんとしている万吉を見下ろす一は、自信ありげにウインクをした。 「大丈夫、僕に任せて!」
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