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名探偵とか噂の隣の幽霊のせいで、最近は墓場独特の静けさも楽しめなくなっていた。
部屋の中の荷物を粗方鞄に詰めると、皺だらけの顔を歪ませ、彼は大きな溜息をついた。
その胸には、銀色のアタッシュケースが大事そうに抱えられていた。他の荷物もいっぺんに抱え込むと、彼は部屋を出ようと振り返った。
「どこへ行くんです?」
そのとき、部屋の中に響き渡った聞き慣れない声。ぎょっとして顔を上げると、扉の前に、見知らぬ青年と少年が立っていた。
「なっ、なんだお前たち!」
青年はお構いなしに、部屋の中をうろつき始めた。
「おい!」
と、抱えていた荷物を足元に置いて、青年に怒鳴る。
部屋の隅々を見て回る青年の後ろを、少年もちょこちょこ追いかけて、青年の真似をするようにきょろきょろしている。
見て回るほど、立派な部屋ではない。六畳ほどの和室、卓袱台と簡単な台所と小さな箪笥と、そのくらいしかない。自分がじっとしているのに畳を滑る足音が聞こえるこの状況に、苛立ちが募る。
「お引越しされるんですか? でもここより住み心地のいいところ、他にないと思うけどなあ」
振り返った青年の顔には、どこか見覚えがあった。
「申し遅れました。僕、佐々野さんの隣の墓に入ってる、金田一と言います」
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