5人が本棚に入れています
本棚に追加
「こーんにーちわっ!」
大きな声で挨拶をすると、談笑していた大工たちは、ぎょっとした顔で振り返った。
「ゲンさん、いるう?」
「ああ、俺だが……どうしたんだ、お医者先生?」
草むらから突然姿を現した万吉に、元則は首を傾げて言った。
「ちょっと聞きたいことがあってさ。腰が痛くなくなったのって、いつ頃からかなあ?」
「そりゃあ、あんたんとこ行って、家帰って薬飲んだら……その日の夜には、もう平気になったなあ」
「そっかあ!」
と万吉は満足そうににっこり笑うと、こんなことを尋ねる。
「今日、ゲンさん家に行ってもいーい?」
「別に構わねえが、なんでまた……」
「また急に腰が痛くなったら困るでしょー? 終わったら声かけてね! じゃ!」
と片手を挙げ、万吉はまた草むらに飛び込んで、姿を消してしまった。まるで嵐が去った後のように、大工たちは呆然としていた。
「……新しいお医者って、随分明るい方なんですねえ」
「まあ、愛想がないよりいいですけど……」
「明るいっていうより、子どもっぽいっていうか……」
「うーん……俺が行ったときにゃ、一回も目え合わせられなかったけどなあ」
最初のコメントを投稿しよう!