5人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めたのは、扉を叩く乱暴な音でだった。
まだ開けきらない目を擦りながら診察室を出ると、カウンターの向こうの玄関に、自動ドアを叩く男の姿があった。
万吉は小走りで自動ドアへ駆け寄る。自動ドアと言っても、これは壊れていて、隙間に指をねじ込んで開けなくてはならなかった。
「ど、どうしました……?」
男は鋭い目で、万吉をじろじろ見つめる。
「診療所ができたって聞いたんでな。おめえが医者か?」
「は、はあ、そうです」
息がおかしなところに入って、上手く返事ができなかった。男は、「ふうん」と口を鳴らしてから言った。
「じゃ、俺を診察してくれねえか」
「……え」
最初のコメントを投稿しよう!