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「ささっ、遠慮しないで、どうぞ!」
「お邪魔します……」
玄関先で万吉が靴を脱ぎ始めたとき、廊下の奥からぱたぱたと足音が近づいてきた。
顔を上げると、目の前に、自分を見上げる少年の顔があった。
「幸仁、これから町のお医者さんになる宇津美先生だよ。ご挨拶なさい」
幸仁と呼ばれた少年は、ランドセルを背負ったまま、万吉に向かって深々とお辞儀をした。
「よろしく!」
「あ、ああ、よろしく……」
「それじゃあ父ちゃん! 行ってきます!」
幸仁は靴のかかとを踏んだまま、万吉の横をすり抜けて、外へと飛び出していった。
「元気な子ですね……」
「一人息子です。いやあ、一年生であんな調子じゃ、この先が心配でなりませんよ」
その回答に、万吉はぎょっとした。仁の血をしっかり継いでいるのだろう、身体の大きな子だったから、てっきり四年生くらいだと勘違いしていた。
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