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「お口に合うか分かりませんが」
仁は万吉の向かいに座ると、茶碗に堆く盛られたご飯をもりもり食べ始めた。同じ食器を使っているのに、彼のはまるでままごとのようだ。
万吉は小さく「いただきます」と呟いて食べ始めた。鮭の塩焼き、キャベツの千切りの小山にちょこんと寄り掛かるミニトマト、味噌汁。お口に合わないどころか、ほっとするほどに優しい味だった。黙って食べているのもなんだから、万吉は仁に「おいしいです」と伝えた。すると彼は、子供のように満面の笑みを浮かべた。
「診療所の具合はいかがですか? すみませんねえ、あんなものしかご用意出来なくて」
「いえ、気長に掃除していきますよ……そういえば、今日患者さんがいらして」
「本当ですか!」
仁は食べる手を止め、身体を前のめりにして万吉に近づいた。
「良かったです! やっぱり、病院はなくてはならないですから! みんなが必要としてくれてるってことですね! で、誰が来たんですか?」
「川辺さんって方です。大工さんの」
「ああ、あの人……腰が痛いと?」
「ええ」
頷いて、万吉は味噌汁を啜った。
ところが暫くしても、仁から話を続けようとしたり、食事を再開しようとしたりしない。万吉が顔を上げると、仁は眉間に皺を寄せていた。
「何か心当たりでも?」
尋ねると、仁は持っていた食器を置いて、また前のめりになった。
「先生! 愚問ですが!」
「は、はい……」
「幽霊なんて信じますか!?」
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