貴方の悪夢引き受けます

14/53

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
3.  ……「はい、こちら悪夢探偵事務…あぁ、貴方でしたか。その節はどうも。それと おはようございます」 今時珍しい黒電話の受話器。その向こうの相手と顔を見合わせてるわけでもないのに佐藤はにこやかに朝の挨拶をしている。そんな佐藤の様子を寝室の少し開いたドアの隙間からチャコールグレーの猫が じぃ っと見つめていた。彼は佐藤の飼い猫のミケ。三毛猫でもないのに何で自分の名前はミケなんだ?と名付けられた時にミケは佐藤に聞きたがっていたらしいとか何とかかんとか…。 「えぇ大丈夫ですよ、僕こう見えて朝は得意なので…えっ?あぁ、あはは…、朝が得意とは朝に強い…はっきり言えば早起きなんです僕って」 なら最初から変な言い回ししてないで いつも早起きです って言えば良いじゃないか。 ミケは短くため息(?)吐くと佐藤の方にゆっくり歩いて行くなり佐藤の足に頬をすりすりさせた。 佐藤は受話器を少し話して「おはよう、ミケ」と小声でミケに挨拶した。それからまた受話器を耳にあてると「失礼しました。続きをどうぞ」と穏やかに電話相手に言った。 「そうですか…」 ふむ…。佐藤は考えるように顎に手を当て相手の話しの続きを黙って待った。相手も佐藤に話しをするべきかどうか悩んでるらしく会話の続きが始まりまで少し間が空いた。 「お会いした事は?……えぇ、……無い?…そう…ですか……。いえ大丈夫です、どうぞ続けて」 「みゃあ?」ミケが不思議そうな(?)顔をして佐藤を見上げた。佐藤はそれを見て唇の前で人差し指を立てると「しぃ」とミケに静かに言って聞かせた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加