貴方の悪夢引き受けます

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「あっ!花に水やりしなくちゃ!」 いつもの日課を思い出してソファーにかけといた黒色のブランケットを取って適当に肩に羽織おると佐藤はいそいそ玄関に向かって歩いて行った。  家具から何から自宅に備えられてあるほとんどの生活必需品や身につける物全て黒色なのに庭に置いてあるビオラの花だけは黄色に白に紫、中には二色の変わった色をしていてポップでカラフルなのが何だか奇妙。 少なくとも毎朝バス停に向かうために佐藤宅の前を通らざるを得ない高橋だけはいつもそう思っていた。…とは言っても高橋は佐藤の自宅の中に入った事があるわけではないが…。 今日“も”佐藤(あいつ)に会わずにすみますように! そんな事を神様に拝んで家の前を歩かれてるなんて知ってなきゃ思った事もない佐藤はミント色のリュックを背負って早歩きでこそこそ歩いている高橋に気付くと あっ! と喜びの表情になって水やりしていた手を止め「高橋さん!」と声をかけた。 げっ!と高橋は思ったし実際ちゃんと「げっ!」と口に出していた。 「おはようございます。良い天気ですね」 げっ!と言われた事なんて気にしちゃいない。にこにこ駆け寄ってくる佐藤を見上げながら「そうですね」と答えながら たった今お前に出会ったせいで私の心は土砂降りになったけどな。と高橋は思った。
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