貴方の悪夢引き受けます

30/53

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「祖母から聞いたのですが、チリも積もれば山となるだかなんだかって祖父はよく笑いながら言っては財布の中に百円玉を見かけると その壺の中に入れていたそうです。それは幼い頃からの祖父の癖のようなものだったらしく祖父はその行いの事を“つもり貯金”と呼んでいたそうです」 「つもり貯金?」高橋が首を傾げた。 「何かをしたつもりになって貯める貯金だそうです。例えば『アイスを買った“つもり”』とか『車を買った“つもり”』とか…」 「いや車はきついべ…」と白川が呟いた。 「祖父は人体感覚が酷く悪いらしくて免許返納の歳になっても車の免許が取れなかったので 車を買ったつもりになって乗ってる気分にでもなっていたんでしょうね」 「ちょっとそれは無理がありすぎるような…」 「あんたの爺さんますます可哀想になってきたわ」苦笑いしてる高橋の隣で綾瀬が目を伏せた。 「…と、まぁ そんな感じで貯めに貯めていたのでお金はかなりあるらしいそうです。どうぞご遠慮なく持って行って下さい」 「持ってけって…その前に本当に指定した額があるか確かめねぇと…」 「白川お前本気で数える気かよ?」 「しょうがねぇだろ?ならあれか、お前この壺担いで銀行行って来てくれんのかよ?」 「それは……」綾瀬は少し考えて それからすぐに深いため息をついた。 「しょうがねぇな…やるか…」 「おい佐藤…って言ったか?リビング借りんぞ」 「どうぞどうぞ、ご遠慮なく!僕ずっと家に居ますんでごゆっくり数えて下さい」 「あっ、それじゃ私はこれで…」 こんなわけの分からない奴らと同じ場所にいつまでも居たくない。高橋はさっさと帰ろうとしたが 「手伝え?」と にっこり♡顔の白川に肩を掴まれてしまったのだった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加