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5.
高橋達の住んでる地区にはスポーツで有名な女子校があった。特にバレー部は強豪と噂で いつも夕方くらいになると すらりと手足が長い長身のバレー部の女の子達が学校の周りを二列になって並んで走っている。
「皆声出していこう!ファイトー!」
先頭を走っていたキャプテンの今井依子が皆に元気に声をかけた。
その声にチームメイト達が「はいっ!」と大きく返事を返してさらに大きな声で「ファイッオー!ファイッオー!」と掛け声を出しながら走り出した。
来月は予選大会、去年決勝を決める大事な試合でうちの学校を負かしたS高校に今年こそ勝たなくちゃ!
今井はチームの誰よりもその気持ちが人一倍強かった。今井の心を燃やしている理由のひとつに 去年最後の最後で相手チームのボールを取り逃してしまったせいでポイントを取られてしまった事が原因だからだ。
今年は負けない!絶対負けない!私はキャプテンなんだ!先輩達から受け継いだ気持ちを無駄になんかしない!
「依子、息すんの忘れてんぞー」
今井と中学からずっと一緒にバレーをしている吉田みる子が 今井の考えてる事を悟って苦笑いをこぼした。
「うちらも居るんだ。あんた一人で全部背負う事ないよ。皆で勝ちを取りに行こう」
「…みる子……。…うん、そうだね!皆で頑張ろう!」今井は隣で走ってる吉田の顔を見てホッとすると笑みを浮かべ頷いた。するとその時 後ろの方で「何あれ?」と後輩達が立ち止まった。気付いた今井が振り向いて「どうしたの?」と尋ねた。
「何か…そこに黒い袋が…」
「黒い袋?」
今井と吉田は顔を見合わせると後輩達の方に歩いて行った。
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