貴方の悪夢引き受けます

39/53

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
パンを一口食べた瞬間「美味しいっ!」と高橋が飛び跳ねた。 「うん、食えなくないな…美味いよコレ。あんた上手だね」 床にあぐらをかいてもぐもぐ食べながら綾瀬はテーブルの上に飲み物を用意している佐藤を見上げた。 「お口に合ったようで良かったです」佐藤は ふんわり 笑った。 「おい、あんた」白川が椅子に座って にこにこ パンを食べている高橋を睨んだ。 「何れふか?ほふぁいはおひて?」 何ですか?怖い顔して?と言ったのだ。きょとんとしながら白川の方を見てきた高橋を見て 白川は呆れてため息ついた。 「ついさっき お友達が天国行っちまったってのに随分元気だな。あんた達本当は友達なんかじゃないんじゃねぇのか?」 「…友達ですよ」 「はぁ?」 「大事な友達だったからこそ泣いてるわけにはいかないんです」 高橋は はぐっ とパンをもう一口食べた。 「眞知子は私の笑ってる顔が好きって言ってくれたんです。だから…どんなにつらくても悲しくても 私は泣くわけにはいかないんです。笑ってないと亡くなってしまった眞知子がもっと悲しむと思うから」 白川は黙ってしばらく高橋の顔を見ていた。それから少しして 諦めたように やれやれ顔して懐からタバコの箱を取り出すと それを一本口に咥えライターで火をつけるなり足を組んで口を閉ざした。 「西岡ちゃん、やっぱ死んじゃってたんだ?」 綾瀬が聞き返すと 高橋は こくっ と頷いた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加