18人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「あんただけだぞ、そんな真っ赤になって肩で息してんの」
あんなものとうに見慣れてる白川は何ともない顔して新しいタバコを口に咥えた。
「す、すいませんね!お子ちゃまなんで!」
よく見れば自分以外皆平気そうにしている。あんなビデオ生まれて初めて観たもんだからびっくりして慌ててしまった高橋は自分だけ真っ赤になっているのがだんだん恥ずかしくなってきて ますます顔を真っ赤にしながら早足でソファーの方に戻って行くと座ってりんご100%ジュースをごくごく飲んだ。
「じゅーちゅ美味ちぃでちゅか〜?」
「はい、美味しいですよ!お子ちゃまで悪かったですね!」
高橋はキッと綾瀬を睨みつけた。
「と言うか…」高橋のジュースを飲む手がピタリと止まった。
「眞知子が整形したのって…」
「えぇ、きっと 過去の自分と決別したかったからかもしれませんね。だって彼女二〜三本ビデオを出してそれきり…事務所を退所してるそうですし。ね、鳴子さん?」
鳴子は頷いた。
「え、どうして鳴子さんが眞知子の事 知ってるんですか?」
「私も同じ仕事をしていたから。でも、西岡さんとは事務所は違うから 佐藤さんに頼まれて昔同じ仕事をしていた子達に西岡さんの事を聞くまで彼女の事は全く知らなかったんだけど…」
「そうなんですね。…あっ、“同じ仕事をしていた”って事は今は…」
「最近辞めたんです。別に西岡さんのせいではないのだけどあの悪夢を見た日から何だかビデオに出演するのが怖くなっちゃって思うように自然な演技が出来なくなったから…。それにもう結構歳だし…」
「あんた何歳?」綾瀬が聞いた。
「今年で三十です」
「もう歳ってまだまだ若いじゃ…」高橋が驚くと「この業界じゃ若けりゃ若いほど有利なんだよ」と白川が言った。
最初のコメントを投稿しよう!