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2.
………「……悪夢探偵事務所って…なにここ?こんなとこ前下見に来た時無かったのに…」
桜が満開な新しい季節。引越して来たばかりのまだ慣れぬ町の新しい空気を腹いっぱい吸い込んで「よし!今日から新生活頑張るぞ!」と意気込んだばかりだと言うのに引越し先のアパート前に怪しい看板が立つ二階建ての家が建ってあるではないか。一体何なんだろうか この見るからに不気味そうな家は…。
女はポカンとしたままその看板の前から動けなくなった。
それに気付いた引越し業者の社員がトラックから彼女の荷物が詰まったダンボール箱を出しながら「あぁその“店”なら前からありましたよ」と声をかけた。女は目を丸くして「ええっ 嘘っ!?」と振り向いた。
「本当ですか!?だって…でも前来た時は…」
「その店 個人経営で木曜日だけ休みなんです。高橋さんがアパートの下見に来られた日ってもしかして木曜日だったんじゃないですか?」
「あ…!…そうだったかもしれない!です…」
「やっぱり」引っ越し業者の社員は笑った。そして「こちらの荷物も部屋の中に運んで大丈夫ですか?」と聞いた。
高橋こと、高橋羅夢(今年の春からT大学の一年生)は「お願いします!」と返事した。
それにしても何でまた自分が引っ越して来たアパートのお向かいに名前から見てかなり危なそうな店があるのだろうか?不動産屋のやけに爽やかなお兄さんにもっと詳しく近所の事について聞いておけば良かった…。
今更になって後悔してため息吐くと「お世話になりました」と怪しい店だか家だかの中から女性が出て来た。
家の真ん前に立っていた高橋は慌てて端っこに避けて電話中のフリをして携帯を耳にあてた。会話相手は居ないのに「うん、そうだよねー!分かる分かる!」なんて高橋は大袈裟な演技をしている。本物の役者が居たら何て酷い大根役者だとつっこんでくるかもしれない下手くそな演技だった。
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