また会う日まで

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「上へ参ります」 オッ、聞こえる聞こえる。 あのエレベーターガール、本当、美人だよな。 声もいいし、スタイルも抜群。 我慢出来ず、今日も来てしまった。 このデパートに通い始めて、3週間が経った。 つい昨日のことのようだが、時が過ぎるのは早い。 さて、じゃあ、行こうか。 エレベーター、エレベーター、ヤッホー。 やっぱりこの時間帯だと人が少ないな。 今日は何階にしようかな。 たまには雑貨売り場にしよう。 ゆっくりと上がって行く。 あ、この老人、意外にもオモチャ売り場の階で降りた。 孫に何か買うのかな。 そう言えば、前にも見た気がする。 確か、紳士服売り場で降りてたな。 そんなことどうでもいいけど、エレベーターガールってエレガって言うのかな、縮めると。 まぁ、どうでもいいけど、もっと顔を見たいな。 じろじろ見るのはまずいし、かと言って、やっぱりもっとよく見たいし。 まぁ、3週間通って、美人なことは間違いないとは分かった。 でも、ストーカーと思われたくないし、知らんぷりしていよう。 おっ、着いた。 じゃあ、また会う日まで。 何を考えているんだ、俺は。 今日も色んなお客さんがいるわね。 あの人、今日も来るのかな。 かっこいいし、優しそうだし。 でも、じろじろ見るのは失礼だし。 あー、嫌だ嫌だ。 どうしてなのかしら。 いつから気になっているのかな、私。 1ヶ月前くらいからだっけ。 いけないいけない、集中集中。 昨日、クーラーつけたまま寝ちゃったから、喉がおかしい。 エレベーターガール、失格。 でも、のど飴があって、助かった。 サンキュー、のど飴。 あっ、来た。 どうしよう、今日、化粧、濃くないかしら。 駄目駄目、仕事仕事。 スマイル、スマイル。 何階かしら? いつも階が違うわね。 独身なのかな。 あ、着いちゃった。 さよなら、また会う日まで。 私ったら、いけないいけない。 また今日も来てしまった。 やっぱり綺麗だな。 化粧してるけど、すっぴんも見てみたいな。 声、辛くないのかな。 ずっと、あの心地いい声を聞けて嬉しいけど、喉、痛くなりそうだな。 のど飴でもあげたいけど、そんなこと出来ないしな。 さて、今日は何階にしようかな。 おっ、また人が少ない。 けど、またいつもの老人がいる。 今日は雑貨売り場だ。 じゃあ、俺はオモチャ売り場にしよう。 しかし、このご老体、元気そうだな。 やっぱり、このエレガちゃん目当てなのかな。 まぁ、いいや。 さぁ、着いた。 また会う日まで。 今日も来るかしら。 あ、来た来た。 そう言えば、いつもこの時間ね。 人が少ないからいいんだけど、あの、彼女いるんですか?なんて聞けないな。 さて、今日は何階? レストラン街か、いいな。 一緒に食べたいけど、我慢我慢。 って、何を我慢するのよ。 さぁ、着いた。 じゃあ、また会う日まで、さよなら。 こんにちは。 と、俺は心の中で挨拶をする。 こんにちは。ご機嫌いかがですか? と、彼女は返してくれる。 くーっ、たまらんたまらん。 いかんいかん、不真面目では嫌われるぞ。 今日は、何階にしよう。 あれ、また老人がいる。 もしかして、本当にエレガちゃん目当てのストーカーかな? 俺も人のことは言えないけど、怪しいな。 またこの間と別の階だ。 ん、何かおかしい。 プルプル震えてる。 大丈夫か? おいおい、倒れるなよ。 うわっ、何で、こっち見るんだ? 怖い怖い。 やばいよ、どうしよう。 今日も元気に行きましょう! って、私、空元気なのかな。 でも、いいもん、きっと、あの人、来てくれるはず。 あっ、来た来た。 やったー、やっぱり、素敵だわ。 あら、このおじいさん、また来たのね。 素敵なこの人も、毎日のように来てくれるけど、何してるのかしら。 嬉しいけど、寂しい。 確かめたいけど、無理だもん。 エッ、おじいさん、大丈夫、震えてるわ。 どうしようかしら、非常ボタン、押した方がいい、私? アッ、何で、あの人を睨んでいるの。 何、何。 キャッ。 「ねぇ、覚えてる。私たち、このエレベーターで出会ったのよね」 「うん、そうそう。でも、感謝しなきゃね。あの老人に」 「そうね。あの常連のおじいさんが、いつからか、あなたのことを私を付け回してるストーカーだと思ってくれたおかげで、私たち、話せたんだもの」 「そうだね。まぁ、実際、俺はストーカーみたいだったけどね。でもさ、老人が俺を押さえ付けようとしなければ、君は、大丈夫ですか?って声をかけてくれなかったよね。本当、老人に感謝感謝」 「あなたこそ、私に、僕は大丈夫だけど、あなたも大丈夫で良かったって言ってくれて、嬉しかったわ」 「でも、引っ越すから、このデパートとも、しばしのお別れだね。また会う日までだな」 「そう、また会う日までね」
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