私の彼

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私の彼

 私の彼は料理人だ。東京で一流フランスレストランを経営してる。  その為、彼はグルメだ。お店が休みの日はいつも彼が気になっていると言うお店に私を連れて行ってくれる。  そして「この料理には隠し味のレモンが効いてていい」とか「このキノコはフランスのものを使っている」とか必ず私に言ってくる。  彼のお店の定休日は水曜日だ。水曜日は水を表す。お客様が水のように出て行かないように。お客様がまた戻って来ていつも繁盛するようにと水曜日は休みにしていると聞いている。  レストランだから土曜日や日曜日に休む事は出来ないのでデートはいつも水曜日だった。  そして今私は、彼と待ち合わせている。今日は西麻布にあるフレンチレストランのフルコースを予約してくれたらしい。 「芳恵〜待った?いつもごめんね平日にデート なんて休み僕に合わせてるんじゃないの?前から気になってたんだけど」 「裕司〜私も今来たところだよ。私の会社もね水曜日休みなんだ〜だから水曜日でありがたいんだよ。今日は特別に月曜日でも大丈夫なの?」 裕司は言った「今日は臨時休みにしたから大丈夫だよ。芳恵〜前から聞こうと思ってたんだけど〜芳恵の仕事ってどんな仕事?」 芳恵は「う、うん小さな雑貨店だよ」 咄嗟に嘘をついた。  何故なら料理人の彼はプライドが高い。そしていつもこの料理の隠し味は〜とか蘊蓄を言う。いつも自分の料理が一番だと思っている。 だから、彼は今日も有名店を食べ歩く。  私のお店も彼と同じ水曜日が定休日でよかった。  私も東京で四つ星のレストランの経営者だとは言えない。20代で四つ星を取ったシェフだとは口が裂けても言えない。  私は裕司の前では料理ができない不器用な彼女の振りをする。今日はエイプリルフールで私の誕生日だ特別に月曜日なのに臨時休みにしてくれた。これも自分のお店だから彼は融通が効くのだろう。  今日はエイプリルフールで私の誕生日だ。 小さな雑貨店だと嘘をついても罰は当たらないと思う。この前も「今度うちに来て〜私料理作れないの〜」そう言って裕司に夕飯を作ってもらった。 いつまで嘘を突き通せばいいのか?わからないけど、ばれないようにこれからも裕司に夕飯を作ってもらえたらありがたい。 私の料理より裕司の料理の方が美味しいもんね。  休みの日ぐらい人が作った料理食べたいし。 私の家は裕司が来る時だけ私が料理人だという痕跡を消していた。  これからも私が料理人だとばれなければいいけど〜。  笠倉芳恵はこのままずっとたまに自分の家に 呼んで桜庭裕司に夕食を作ってもらおうと思っていた。 続く
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