前編

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「日向セツナ、さっきの宣言はなんだ」 「何か問題ある?」 「問題しかない」  放課後、僕は急いでセツナを呼び止めた。  今日一日、話したこともないクラスメイトから「お幸せに」と祝辞を述べられ、居心地が悪かった。 「そんなに嫌なら、すぐ別れたことにするか?」 「頼む」 「理由は『久我にひどいことされた』と、みんなに説明を――」 「ちょっと待て」  僕は慌てて、セツナの言葉を遮る。  そんな噂が学校に広まったら、内申点に響くかもしれない。 「君は何がしたいんだ。ずっと前から僕が好きだったとでも?」 「そんなわけあるか」 「……そこは嘘をつかないのかよ」  狼のような瞳をつり上げたセツナに、僕は思わずため息をついた。  彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべる。 「誰かの未来を邪魔したくなったんだ。先のない私と、同じ気分を味合わせたくてな」 「なぜ僕なんだ。君に恨まれるようなことをしたか?」  セツナは「何も」と首を横に振った。 「将来を真面目に考えてる奴をターゲットにした方が、面白いだろ」 「……悪趣味だな」  セツナは僕に背を向けると、片手を上げて去っていく。 「明日から楽しみにしてろよ」
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