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「日向セツナ、さっきの宣言はなんだ」
「何か問題ある?」
「問題しかない」
放課後、僕は急いでセツナを呼び止めた。
今日一日、話したこともないクラスメイトから「お幸せに」と祝辞を述べられ、居心地が悪かった。
「そんなに嫌なら、すぐ別れたことにするか?」
「頼む」
「理由は『久我にひどいことされた』と、みんなに説明を――」
「ちょっと待て」
僕は慌てて、セツナの言葉を遮る。
そんな噂が学校に広まったら、内申点に響くかもしれない。
「君は何がしたいんだ。ずっと前から僕が好きだったとでも?」
「そんなわけあるか」
「……そこは嘘をつかないのかよ」
狼のような瞳をつり上げたセツナに、僕は思わずため息をついた。
彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「誰かの未来を邪魔したくなったんだ。先のない私と、同じ気分を味合わせたくてな」
「なぜ僕なんだ。君に恨まれるようなことをしたか?」
セツナは「何も」と首を横に振った。
「将来を真面目に考えてる奴をターゲットにした方が、面白いだろ」
「……悪趣味だな」
セツナは僕に背を向けると、片手を上げて去っていく。
「明日から楽しみにしてろよ」
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