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8 ぼくとさわがしいであい
「君は誰なの?」
僕が寝ていた部屋から出て、こっそり静かに薄暗いお城の中を歩き、ついに我慢が出来なくなって聞いた。
僕は彼に会った記憶は無い。
それなのに、彼の顔は何故か見覚えがある。
だから彼はもしかしたら記憶がなくなる前の僕のことを知っているかもしれない。
そう思ったら、聞かずにはいられなかった。
「俺様は偉大なるシャド様だ」
「しゃべるな」と怒られるかと思ったけれど、シャドは意外にもきちんと答えてくれた。
「シャドは僕のこと知ってるの?」
「少しだけな、さっきトキオミ様から聞いた」
「それより前のことは?」
「は? 知らねぇよ」
「……そうだよね」
トキオミに寝かしつけられる時に聞いた話し声、これがきっとトキオミがシャドへ僕のことを話していた声だったんだろう。
このシャドというヒトはきっとトキオミの部下で、きっと彼もそれなりに偉いヒトなんだろう。
僕が以前どこかで一方的に、見たことがあるだけかもしれない。
「ごめんなさい、変なこと聞いて」
「それより、そろそろ着くぞ」
「え?」
「王のコレクションは数が多いから、部屋もいくつか分かれている」
それを聞いて、本来の目的を思い出した。
「カナリアは何処の部屋にいるの?」
「そこまでは俺様も知らねぇ、お前の大事なモンなら自分で探せ」
「う、うん」
シャドは案内終わりとでも言いたげに手を振って、僕を追いやる。
確かにこれは僕が望んだことなんだから、ここまで案内してもらっただけでもありがたいことで、これ以上頼る訳にはいかない。
僕はおそるおそる手前のドアを開ける。
途端に騒がしい声が聞こえてきた。
「開けなさいっ! 出しなさいよー!! ちょっと誰かー! あ、ソコの今入ってきたヒト! アタシをここから出して!!」
そして部屋に入ってすぐ、僕はその騒がしい声の主とぱっちり目が合ってしまったのだった。
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