4 ぼくたちのまちめぐり

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4 ぼくたちのまちめぐり

「うわぁすごいねぇ」 カナリアの家から街まで歩いて20分弱。 僕たちは街の中心と思われる広場に来ていた。 そして僕は驚いた。 遠くに見える立派なお城、ひしめく建物、行き交う沢山のヒトビト。 もしかしたら僕は楽観しすぎていたのかもしれない。 この中から魔女と契約したヒトを探すのは骨が折れそうだ。 「カナリア、どうしよう?」 「……」 僕は少し不安になってカナリアへ振り向く。 カナリアは硬い顔でうつむいていた。 そして気付く。 行き交うヒトビトのカナリアへの視線。 恐れ、軽蔑、嘲り、様々な感情がねっとり絡みついてくるみたいだ。 カナリアから聞いていたのに、僕はわかっていなかった。 “他と違うモノを恐れる”ということ。 カナリアが他からどんな眼で見られているか。 「ごめん、何処か落ち着ける場所に行こう」 「うん……こっち」 カナリアは踵を返して、逃げるみたいに早足で進む。 その背中には隠すことのできない身長よりも大きな、白い綺麗な翼がある。 その翼に隠れるようにしてうたっていたカナリアを思い出す。 どうしてそんな風にしていたのか、今なら少しだけわかる気がした。 「……ここ」 カナリアに先導された先は、寂れた飲食店だった。 「2人分、お願い」 「お、珍しいねぇ、しかも男連れとは」 「致し方なくよ」 「ハイハイ」 店主と見られるご婦人がニヤニヤとカナリアに話しかける。 その眼には先程見た悪感情はない。 その事に安堵した。 ちゃんとカナリアをわかってくれるヒトもいる。 「こっちの席……って何笑ってるの?」 「ちゃんとカナリアの事、わかってくれる人がいて良かった」 カナリアが案内してくれたテーブルに着く。 カナリアは相変わらず居心地悪そうな顔をしているけれど、先程の広場の時とは違う少し照れたような表情も見えた。 程なくして料理が出来たようで、カナリアがサービスの水と一緒に持ってきてくれた。 「ありがとう、随分このお店に慣れてるんだね」 「いつも働いてるからね」 「そうなんだ」 この店はやはり先程のご婦人が店主をされているようだ。 そして店主とカナリアの母親が元々知り合いで、ここで働いていたらしい。 その為カナリアも小さい頃から店主にお世話になっており、母親が病に倒れた頃からはカナリアが働かせてもらっているそうだ。 そうした長い付き合いもあるおかげで、ここのヒトたちはカナリアをちゃんとカナリアとして扱ってくれるらしい。 「でもここのヒトたちって言う程、ヒトいないよね?」 「ここのメインは夜なのよ。居酒屋としてはそれなりに忙しいの」 「へぇ〜」 そんな会話をしながら、料理を食べた。 カナリアには少し睨まれたけれど、とても美味しかった。 「これからどうしようか?」 食事も終わり、食休みをしながら水をちびちびと飲む。 「闇雲に探すのを諦めてくれて良かったわ」 「あ、じゃあお城に行ってみようか」 「はぁ?!」 「だってあんな大きな建物なら色んなヒトが居るだろうし、魔女との契約者の話だって入ってきてるかもしれないよ」 僕は街並みを見た時の立派なお城を思い出しながら言った。 でもそれと同時に思い出した。 あのカナリアへ絡みつくような嫌な視線を。 「あ、でもお城とか僕たちみたいな一般人は入れないかな」 「流石にいきなり謁見とかは出来ないけど、お城に入れはするわ」 「そうなの!?」 カナリア曰く、畑の種蒔き時期から隣人トラブルなどまで色々な事を相談できるヒトたち、通称時読士と呼ばれるヒトたちがお城に務めているらしい。 その為その予約と相談なら、誰でもお城に入れるらしいのだ。 「じゃあ早速、予約しに行こう」 「そうね……相談だけならタダだし、行くだけ行ってみましょうか」 「うん!」 僕たちは食べ終わった食器を片付けて、店主に挨拶するとお城へ向かった。
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