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最終話 絶対に秘密ですよ
例の騒動からしばらくして、ベーレンズ前伯爵の子どもたちが生きていたことが発表されました。
ダミアン様は爵位をアールトに譲ると、本来ご自身がもっていた男爵領へと戻られたそうです。男爵領はあまり豊かな土地ではないそうで、だからこそベーレンズ家を乗っ取ろうとしたのではないかと、ヴェッセル様が仰っていました。
シャルロッテ様のお腹の御子が、実は家出の手引きをしたご令息との子どもではなかったと判明し、一悶着があったそうですが、その後どうなったのかは分かりません。
ベーレンズ伯爵家の当主となったアールトは、ヴェッセル様に後ろ盾となって頂きながら、家門の発展のために日々奮闘しているようです。
結婚や恋愛に興味がなかったトルライン侯爵が、王命で娶った妻を常に傍に置いて離さないという噂が広がったせいで、噂好きの御夫人たちからの山ほどの招待状が届いて大変だったことは、今では懐かしい思い出です。
昔のことを思い出しながら刺繍をしていると、
「ねえ、お母様? お父様とお母様は王命で結婚されたのですよね? なのに何故そんなにも仲が良いのですか? 何がきっかけだったのですか? 誰に聞いても分からないって言うのです」
金髪の少女――私たちの娘がやってきました。
赤い瞳はヴェッセル様にとてもよく似ています。
「ふふっ、さあどうでしたっけね?」
「もうっ、いつもそうやってはぐらかす! それに私、知っているのですよ? 時々お父様のことを【チェス様】って呼んでいることを。一体誰なんですか? 今日こそは話して頂きます!」
「仕方ないですね……ではこれからお話することは――」
私は針を刺す手を止めると、今日こそは聞き出すぞと意気込んでいる娘の耳元にソッと唇を寄せました。
「絶対に秘密ですよ?」
<了>
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