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<31・守也。>
「うう、ううううっ……」
「お、扇クン?おーい、扇クン?」
これどうしよう。マジでどうしよう。飛龍健真は困り果てていた。
というのも朝から親友の島風扇が、教室の机に突っ伏した状態で沈没しているからである。
原因はわかりきっている。昨日の夜、世界冒険者機関から発表された情報。うちの学校の屋上でダンジョンが見つかり、その処理作業が行われたと公表されたからである。
もちろん、ダンジョンがあったというのは驚きだが、それだけだったら扇がこんなにヘコむこともなかったことだろう。彼は学校の七不思議について調べていたし、その七不思議の儀式がダンジョンを開くためのものかもしれない?というところまで疑ってはいたのだから。
問題はそこではない。
彼が意気投合した美少女“和葉”が――そのテレビに出ていたから。彼女、否彼は変装して学校に潜入した、冒険者コンビRegaliaの片割れだった。健真も、そして扇もニュースを見て口をあんぐり開ける羽目になったのである。他の学校の生徒たちもそうだろう、みんな和葉が“十九歳男の女装”だなんてまったく見抜けていなかっただろうから。
正直、ショックだった。
理想が服着て歩いてるような、最高級の美少女が――まさかの男だったなんて。それも高校生でも転校生でもなかったなんて。そう、健真だってショックはショックだったのだけれど。
――こいつのガッカリぶりを見てると……僕が残念がってる場合じゃないような気がしてくるよ。
でっかい男が机に突っ伏しておいおい泣いている姿はかなりシュールである。暑苦しい、というよりものすごく重たい。いつも明るく、ポジティブが服を着ているような男だから尚更に。他のクラスメートたちもどうしたらいいのかわからず、遠巻きにしている状態である。
「あ、あのさ……扇クン」
とりあえずこれも親友の務めと、声をかける健真。
「よ、良かっただろ?これでダンジョンの事件は解決したんだから。ダンジョンの破壊処理も終わって、あとは事後検証だけっていうしさあ。これでもう、うちのガッコから変な行方不明者が出ることもなくなったんだ。平和が守られたんだよ。良かったじゃん」
「でも、しかし、それでも……うおおおお」
「か、和葉さんが……お、男だったのは残念だっただろうけどさ。でも、どっちみちあんな高嶺の花なんか射止めるのは無理だったって。オカルト研究会の運営も見直されるっていうしさ、また新しい恋でも探せば……」
「そ、そうか!」
「ふえ!?」
突然だった。扇ががばり、と顔を上げて立ち上がったのである。あまりの勢いに、うっかり尻餅をつかされる羽目になる健真。
「そうか、そうか、そういうことか。ようやく答えが出たぞ!」
「こ、答えって何が?」
「和葉さん……否、松葉さんの正体だ!」
「へ、へ?」
なんだろう、とてつもなく嫌な予感がするのだが。冷や汗だらだらの状態で巨漢の彼を見上げる健真。
案の定。
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