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「実は私、今の編集部に配属されて半月も過ぎてなくてですね……ダンジョンと冒険家について全然知らなくて」
「あ、やっぱりそうなんや!」
舞が正直に話すと、正面の席に座っていた二人のうち一人が明るい声を上げたのだった。まだ二十歳前後に見える、眼鏡の若い男性だ。ちょっとキツネっぽい顔つきだが、よくよく見れば驚くほど整った顔をしている。少し襟足の長い、紫がかった黒髪が特徴的な人物だった。
今まで写真でしか見たことなかったが、こっちの名前はたしか。
「なんや、さっきの話。なんか資料読んでるみたいやわーって思ってたんねん。今の時期やし、新人さんがおってもしゃーないな。気にせんでええよ、みんな最初は初心者やねん、どんなことでもな」
「あ、ありがとうございます」
そう、名前は如月松葉。
日本で最も有名な冒険者チーム――否、コンビの若い方が彼だ。隣にいるのは彼の相棒の潮守也。男性としてはかなり細身で華奢に見える松葉とは打って変わって、タテにもヨコにも大柄な男性である。広い肩幅、太い首、丸太のような二の腕。短髪に日焼けした肌の、茶色がかった黒髪の日本人男性である。こちらは確か、五十歳くらいではなかっただろうか。
この二人がどうやって出会って、冒険者なんてハイリスクな仕事をしているのかは知らない。しかしどちらも方向性の違うイケメンであること、そして高いミッション成功率を誇ることから今若い女性の間でも人気のコンビなのだった。
「とりあえず、せやな……インタビューの前に、ざっくりダンジョンと冒険者について自分が解説したるわ」
ニコニコしながら言う松葉。綺麗な顔だが、眼鏡とエセっぽい関西弁のせいかなんだかちょっと胡散臭く見えてしまう。
「20XXに発見された、始まりの塔。それを皮切りに、抵抗者の予言通り次々とダンジョンが発見された。ダンジョンが発見されるたび、抵抗者はちょっとずつ世界各国に情報をくれたんやけど……抵抗者の正体は未だに謎に包まれとるってのが現状やな。宇宙から発信された電波ってことから、こいつも異星人なんちゃうかとは言われとる。ていうか本人もそう名乗っとるしな」
「は、はい。現在増えている塔が全て出そろってしまった時、異星人たちの侵略と支配が始まると警告してきていますよね。そのために手を打たなければいけない、と」
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