<1・巨塔。>

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「せやね。始まりの塔以外にも様々なダンジョンが出現して、それらが被害をもたらしたこと。それからこの抵抗者の忠告やらなんやら……まあいろんな事情があって、戦争しとる場合やないって話になったんやね。で、わりとすーぐ全世界で休戦協定が結ばれて、休戦状態のまま何十年もかりそめの平和が続いとるっちゅうわけや。まあ、第三次世界大戦でも日本には戦闘機がほとんど飛んで来んかったせいで、第二次の時と比べて日本人は危機感薄いまんまやけど」  それは知っている。  そして、ダンジョンの出現と抵抗者の警告だけで、よく急にみんなが休戦協定に合意したものだ、とネットではツッコまれまくっていたらしいということも。  一説によると抵抗者が、“従わない場合は各国のリーダーを殺す”とかなんとか脅したとも言われているが、実際は定かではない。  とにもかくにも事実としては、第三次世界大戦が突然休戦という名で一端終わりを迎えたこと。ダンジョンに関して世界で情報を共有し、協力して調査を進めていこうという条約が結ばれたということだった。  その情報を集約、統括、分析するのが世界冒険者機関。  各国から派遣された選りすぐりの研究者たちが、日夜冒険者たちが持ち帰った情報を精査し、最終的には全てのダンジョンの破壊という目標に向けて分析を続けているというわけである。 「……それらのダンジョンを、冒険者が命懸けで調査するにはいくつか理由がある。破壊したいだけならば、外側の分析だけすれば良いはずだからな」  口を開いたのは、松葉の隣でどっしりと座る守也の方だ。 「各国の兵隊ではなく、冒険者というスペシャリストが専門機関で育成されて、各国の“世界冒険者機関”の支部からそれぞれのダンジョン内部に派遣されるのは何故か。理由は大きく分けて二つ。……ダンジョンは、そこに存在するだけで人間に害を齎す可能性があるら。そして、冒険の見返り……リターンが非常に大きいからだ」  ふ、と守也はにやりと不適に笑った。 「それは同時に、俺達が危険を承知で冒険者なんぞをやっている理由でもある」
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