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<1・巨塔。>
20XX年。
その当時、世界はある大きな戦争の真っただ中にあった。
某大国が隣国に侵攻したのをきっかけに、第三次世界大戦が勃発。北の大地を中心として、世界中が戦火に巻き込まれることとなったのである。
この戦争は、最初に進攻した大国と、その大国を支援する国々が力を失うまで終わることがないだろうとされた。あるいは、侵略された国が滅ぼされ尽くし、それを支援する国々が諦めるまで、と。
しかし。
戦争は、誰も予期しなかった形で幕切れを迎えることとなる。
始まりは、北の大地に突如として出現した謎の塔であった。
『な、なんだこりゃ……!?』
大国の兵士たちはあっけにとられた。
つい少し前まで、此処は何もない氷の大地だったのである。だだっぴろい荒野に、打ち捨てられた亡骸と戦車の残骸があるばかりだった。それが、突然、十階建てのビル以上の高さがある灰色の塔が出現したわけである。
ありえない。現代の技術で、こんなものが今日の今日まで観測されないなんて、そんなことがありえるというのか。
敵国の新兵器かもしれない。もしくは、通信を傍受する電波塔か何かなのだろうか。建造物の外見は、例えていうのであればピサの斜塔に似ているような気がする。あの斜塔のように傾いてはおらず、色も若干異なってはいるが。
『とにかく、この塔の正体を突きとめなければなるまい。そして、敵にとって有利に働くようならば、破壊も検討せねばなるまい』
『りょ、了解です……!』
上からの指示もあり、兵士たちはその塔に近づいていった。放射能を出しているということはない。近づいても何か銃弾を撃ち込んでくるようなこともない。入口は、正面に開いた大穴のみ。元々はドアがついていたのかもしれないが、今はぽっかりと暗く四角い穴を開けるばかりとなっている場所だった。
一人、また一人とその穴に近づいていく。中は暗い。ライトで照らしながらまずは一つ目の小隊が入った。しかし。
待てど暮らせど、彼等は戻ってこない。
それどころか、一回目の定期連絡さえしてこない。
塔に入った途端完全に消息を絶ってしまった小隊。救出のため、さらに第二部隊が入っていった。さらには第三、第四部隊も。しかし。
『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
成果は、何もなかった。
あったのはたった一度。第四部隊のメンバーが無線で伝えてきた絶叫と、謎の言葉のみ。
『こ、これは、この世のものじゃない……ば、バケモノ!』
何十人が入っても、塔からの生還者はなかった。
戦車で、戦闘機で爆撃しても、塔を破壊することもできなかった。
それから、数日後。世界中の政府に、“抵抗者”と名乗る謎の者からメッセージが届くこととなる。その人物は、とんでもない事実を告げたのだった。
『あれは、異星人があなたがたの星に産み落としたもの。あってはならないものです。これからも少しずつ、あのようなものが増えていくことでしょう。皆さんはあれらの正体を突きとめ、解明し、最終的には破壊しなければなりません。さもなくば、この惑星は彼等に侵略されてしまうことでしょう』
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