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「バーカ。こんなの守るやつがいるかよ。おれたちは、泣く子も黙るアークチーム様だぜ。それに、木のしたを掘るだけなんだから、桜の木を傷つける行為には当たらねーよ」
そーだそーだという賛同の声があちこちからあがった。十五対一で賛成の勝ち。ユウセイ以外が桜の木のまわりを思いおもいの道具で掘り始める。
ある者はビールや酎ハイの空き缶で土を掘り、べつの者はそのへんで拾った石で掘る。なかには桜の木の枝を折って土を掘る者まであらわれた。もちろんそれは、お調子者のタカシだった。
「あ、ちょっと……」
ユウセイはビクビクしている。枝を折ることはまごうことなき「桜の木を傷つける行為」にほかならない。こんなことは決して許されることではなかった。
「おー。これはザクザク掘れるぞ」
そう言って、タカシは木のしたの土をどんどん掘っていく。
「さーて、なにか埋まっているかなー」
とくに期待などしていないくせに、悪ノリだけでそんなことを言っている。
「おっ?」
数秒間、土を掘り続けたタカシが急におかしな声をあげた。
「え? なになに?」
べつの場所を石で掘り進めていたトモコが振り向く。
「おい、みんな、こっちこいよ。まじでなにか埋まってるみたいだぞ」
そう言ってタカシはサークルのメンバーを呼び集めた。ユウセイ以外のメンバーが、タカシを囲む。真っ黒の土のなかから、わずかになにかが顔を出している。それはどこか生物のようにも見えた。
「うわっ、本当だ」
「なんか、肌色が見えるんだけど……」
みなが口々に感想を述べる。
「っていうか、これ、本当に人間なんじゃないの?」
そう言って眉をひそめるのはトモコだった。
たしかに、土からわずかに顔をのぞかせているものは灰色と肌色の中間のような色をしていた。どことなく、赤ん坊の指のようにも見えた。
「まさか、本当に死体だったりして」
感覚が麻痺しているのか、タカシは楽しそうだ。
「もう、ちょっと。嫌な冗談は言わないでよー」
そう言って怖がった振りをしているトモコだが、内心ではこの状況を楽しんでいる。万が一、この場所から死体でも出てくれば、それをスマートフォンで撮影してSNSにでも投稿しようと考えているのだ。
「よーし、掘り出して見ようぜ」
タカシは桜の木の枝を投げ捨てて、両手で土をかき分けた。指のような場所を中心に土をどかしていく。肌色の全貌が明らかになった。手が出て、腹が出て、首が出て、顔が出る。土のなかから出てきたのは、赤ん坊だった。
「うわあっ」
タカシはしりもちをついた。赤ん坊は目をつぶっている。洋服は着ていない。
「ほ、本当に死体だ……」
震える声で言った。その瞬間、まわりで笑いが起きた。
「あはははは」
「え? な、なんだよ」
タカシはうしろを振り向く。ひとり離れた場所にいるユウセイ以外の十四人が笑っていた。
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