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「どかーん!」  目がくぎづけになっているユウセイの顔の中心を平手ではたく。 「うぎゃっ」  おもいきり殴られたユウセイは鼻血を出した。 「きゃー、ヘンターイ。この子、私のおっぱい見て鼻血なんて出してるよー」  そこでもう一度、笑いが起きる。見た目としては、サークルの上級生十五人が地味なインキャ新入生をいじめているような格好になっていた。 「おいおい、新人。おまえの鼻血で桜をピンク色にするんじゃねーぞ」  タカシの渾身のギャグで三度目の笑いが起こる。 「はあ」  鼻を抑えながらユウセイは後悔していた。  どうして、こんなところにきちゃったんだろう。 「っていうか、おまえたち、これ見てみろよ」  酔っているタカシが、なにかに気づいた。 「ここ、最近、掘り起こしたような跡に見えないか?」  そう言って桜の木のしたを指さした。そこにはたしかに掘り起こした形跡がある。 「あ、それな、ぼくがさっき場所取りとして印をつけたから……」  そう言おうとするユウセイの頭をタカシがはたく。 「バカ、おまえ、なに冷めること言ってるんだよ。っていうか、わざわざ自慢げに言わなくても知ってるっつーの。新歓の花見の場所取りは、パシリ……じゃなくて、新人の大切な仕事なんだからな。ぎゃはははは」  酒がまわっているタカシは上機嫌に笑った。 「なあ、でもせっかくだから、本当に死体が埋まってるか、掘ってたしかめてみようぜ」  タカシのその発言で、いつものサークルの悪ノリに火がついた。 「えー、それ、いいじゃん。おもしろそー」  トモコも胸を揺らしながら賛成する。 「え、でも……」  サークルのノリを知らないユウセイが止めようとする。すぐ近くには、花見客への注意書きの看板があった。そのなかの一文にこんなことが書いてある。 『桜の木を傷つける行為の禁止』  タカシはその看板をチラと見てから鼻で笑った。
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