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「蒼渚……無表情なお前でも、びっくりする話をしてやろう」
「何?莉玖、とりあえず弁当食えば?」
「弁当どころじゃねぇんだよ!俺に……弟が出来る」
「……え?」
ほとんど変わる事のない蒼渚の目が見開いた
「……え?……え?」
「な?」
「……え?……え?」
「うん。な?」
「ん?……おい!月川がびっくりしてるぞ!」
「何?!うおっ!ほんとだ!」
「月川の表情筋が動いてる!何事だ?!」
「おい、神谷!月川に何があったんだ?!」
クラスの奴等が寄って来る
「蒼渚には何にもねぇよ。事が起きたのは俺だ。聞いて驚け……俺に……弟が出来る」
「弟?」
「ああ」
「………マジか?!え?何歳差になるんだ?」
「16?17?」
「それ、もう神谷の子供みたいなもんじゃねぇか!」
「……だな」
「え~?神谷君、弟が出来るの?」
「かっわいい~。今度写真見せてね?」
「神谷君に似てるかなぁ?」
「どう……かな?」
何故、女子達は嬉しそうなんだ……
「名前は?もう決まったの?」
「さあ?弟が出来るとしか聞いてない」
「そっか~。楽しみだね」
楽しみ……
確かに、弟が欲しいとは思ってた
が……
一緒に遊べる弟だ
まさか、高校生になって弟が出来るとは……
そして1ヶ月後
「蒼渚……父さんが、弟の机とベッドを作った。俺の隣に完璧な弟の部屋が用意された。部屋のドアには、『なぎさ』と書かれたネームプレートが飾られていた」
「作った?……ああ、莉玖のおじさん、建築系だったっけ?机とベッドって……赤ちゃん用のテーブルとか、ベビーベッドだろ?」
「違う!ほんとに、ちゃんとした机とベッドだよ。とにかく、なんか、そわそわして落ち着かねぇんだよ。父さんも、自分の会社立ち上げたばかりで、バタバタしてたのに……」
「………莉玖、ベビーグッズは?」
「あ?ベビーグッズ?」
「赤ちゃん用のオムツとか、服とか、オモチャとか」
「さあ?準備してんじゃねえの?」
「……莉玖、おばさんの調子は?調子悪そうとか、体型変わってきたとか……」
「全然変わりないけど?ん?……そういや、腹出てんのかな?元々あんま出てないから、よく分かんねぇな」
「……そうか。ま、あんま、心配しなくてもいいんじゃね?莉玖、弟欲しがってたよな?」
「いつの話してんだよ?俺は、世話しなきゃなんねぇ弟じゃなく、一緒に遊べる弟が欲しかったんだ!」
「知ってる。でも……意外と一緒に遊べるかも……」
「……あ?」
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