梱包

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 ガムテープで厳重に封をした巨大なダンボールを担いで、勇也は苦心の表情で階段を降りていた。三階の角部屋を借りてしまった自分を心底恨んでいる。階段までダンボールを運ぶのですら二回も休憩を要した。いざ階段が始まると、一段毎に休憩したい気分だ。  元々は一人で引越し作業を行う予定ではなかった。  引越し代を節約するために、友人を二人呼んで、三人体制で業務に臨む予定だった。  しかし、大学の四年間を乱雑に過ごした勇也の部屋は、控えめに言って魔境であった。  友人の一人は、部屋の中に入ってすぐに腰が引けたようだった。 「お前、これを一日で全部やろうってのか?」 「そう」 「無理だよ」 「いや、今日全部やる。明日には大家さんに明け渡さないといけないんだ」 「じゃあもう少し前から準備しろよ」 「そんなこと言っても仕方ないだろ!」 「俺、帰る!」 「は? 飯奢るよ」 「見合わないよこんなの」  もう一人の友人は仕方なく引越し作業を手伝ってくれたが、途中、重いダンボールを引き上げようとした時に、腰をやった。突然うめき声をあげてその場に倒れた。 「ダメだ、腰、痛めました」 「はぁ? そんな、まだ途中だよ」 「もう動けません」 「ダメだって」 「もう、勘弁して下さい、痛すぎます」 「使えないな」 「勘弁して下さい!」  というわけで、勇也は一人で作業を続ける羽目になった。  ただでさえ荷物が多いのに、特大ダンボールが二個も追加された。その怒りを糧に作業に集中すると、意外と仕事ははかどった。 「あいつらなんか、いらなかったな」  勇也はなんとか一階までダンボールを運び終わり、既に運び終わった同じサイズのダンボールの上に置いた。 「この二つは、新宅へは持っていけないな。なんか臭い匂いするし」
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